だからふたりとも…。私の仕事の邪魔をするのなら出て行って欲しい。
ふたりの言い合いを無視して床を拭き続ける。
すると、姫岡さんが雑巾を足で踏む。…いい加減ブちぎれそうだ。ぴっかぴかのスニーカーは限定モデルの物だった。
そりゃー楽しいでしょうね、売れっ子芸能人だからって誰からも羨まれて甘やかされて、小さい時からチヤホヤされて…
欲しい物を何でも手に入れて、整形する必要もないくらい綺麗な顔をして……。
姫岡さんはしゃがみこんで、私の顔を覗き込むように嘲笑う。
「整形したいって話もどーせ下らん男に振られたとか下らん理由なんだろ?
自己肯定したいが為に美しくなりたいなんて、女つーのはほんっと下らない生き物だなぁ?」
「ちょ!真央ちゃん言い過ぎ!」
小馬鹿にしたような言葉が余りに図星すぎて、死にたくなった。
整形したいなんて本気ではなかった。けれどたっくんに振られたのは事実で、誰にも選ばれなかった自分は惨めで堪らなかった。
思い出したくなかった事。嘘ばかりつかれた事。私を泣かせるような事はしないと言って…私の信頼していた友達と影で付き合っていた最低な男。
けれど…私はたっくんを責められないよ。これが私と付き合っていた後ならば裏切られたと泣いて、しおりにも泥棒猫とでも捨て台詞のひとつも吐けただろう。
私はただただ勝手にひとりで熱を上げて、勝手にいつか自分がたっくんの彼女になれると思い込んで…全部ひとり芝居。虚しいし惨め。



