「俺も静綺が好きだ」

私の耳に掠れた声が響いていく。
だから真央の顔を少しだけ意地悪く見つめながら言ってやったんだ。

「そんなの、私にだって分かる」

「人の真似をすんじゃねぇーよ!」

「だってわざわざ大学まで来てさ。こんな人の目立つところで薔薇の花束なんて抱えてたら
そんなの私に会いに来たって勘違いしちゃうよ」

「お前は好きだろう。こんなベタなシチュエーションが
まるで王子様のような俺が、お前の誕生日に歳の数だけ薔薇を持ってくる。
そういったこっぱずかしい漫画みたいな設定が……」

「あんたは王子様っていうよりも王様だけどね」

「それも悪くない」

そう言って、互いに顔を見合わせて笑い合う。
その途端に携帯のカメラを向けた周りの学生がシャッターを切り始める。
真央は私を腕の中から降ろすと、手を取り風を切って走り出した。

「ちょっと消してもらわないでいいの?!スキャンダルになっちゃうよ?!」

「いいよ、お前とならスキャンダルになっても構わない!」

遠くを見つめて走り出した横顔をずっと見つめていた。
その横顔はあの花火大会の日と同じ目が離せなく横顔と一緒だった。

走り出した先に虹が見えて振り向いたあなたの屈託のない笑顔と重なって、この恋に大輪の花を咲かせる。

この恋だけは終わらせる事は出来ない。