「いつか消えていく気持ちだよ」
「本当に?それっていつか自然に消えていくようなその程度の気持ちだったの?」
「だって……真央、多分岬さんと付き合ってるし…敵う訳ないよ…」
「誰かと付き合ってるとか自分とは釣り合いが取れないからって、気持ちを伝えない理由にはならないと思う。
だって静綺…ずっと後悔しているように見えるよ。
ねぇ、同じ後悔をするなら相手に気持ちを伝えちゃってもいいんじゃない?
静綺の言うようにもしも岬さんと付き合ってたとしても、気持ちを伝える事だけは出来るんだから。
それって振られても今より絶対すっきりすると思う」
言葉さえ違えど、りっちゃんはあの日の豊さんと同じ事を言っている。
大切なのは何かを思った次に行動に移せるか、どうか。
恋をするのに資格なんていらないし、誰でも自由に人を好きになる権利がある。
きっと行動をしていない後悔と行動をした後悔は別物だと思うから。
伝えようとすれば伝える機会はいくらでもあった―――
’お前はそれでいいのか?’
’いいも何も。真央に好きな人がいても私には関係のない事だから……’
’そうか…’
あの時も
’俺が理由もなくお前に浴衣なんてあげるかと思ったのかよ?!’
この時も
’お前の作ってくれる料理は元気になれる。
それにお前と話しているのは楽しい。
お前は俺の演技が好きだと褒めてくれた。
そして俺を姫岡真央としてではなく、ただの人間として心を見てくれた。
お前みたいな女は初めてだった……’
いつだって、いつだって……



