りっちゃんにこれ以上心配をかけたくない。努めて明るく振舞っていたつもりだった。
身の程知らずの恋をして、成就しないのは始めから分かっていた事。
あぁ…真央の事を考えたら涙が出そうだ。それを誤魔化すようにりっちゃんに背を向けて前を向いた。
「本当にそれでいいの?」
「いいも何も前に言った通り。
私と真央は釣り合ってないし
芸能人だしどう考えても容姿も釣り合ってないし
人気者だし特別な仕事をしてるし
そんな人にいつまでも恋をしてても自分が惨めになるだけだし…」
「どうして自分と釣り合いが取れないって決めつけるの――?」
その言葉はいつか聞いた言葉だ。
豊さんの真っ直ぐな瞳を思い出す。
’どうして自分と釣り合わないって決めつけるの?’
あの澄んだ言葉がりっちゃんの言葉と綺麗に重なった。
「私には、言い訳して逃げているだけにしか聞こえない。」
どうしてりっちゃんは、豊さんと同じ事を言うの?
諦める為に、この気持ちを忘れる為にこんなに頑張っているのに。
頑張っている?自分の気持ちを押さえつけて、相手の為だって言って、結局は伝えるのが怖くて逃げているだけじゃないか。
こんなの頑張っているとは言えない。
’釣り合わない’’別の世界の人間だから’全部言い訳だってとっくに気づいている。自分にそう言い聞かせて、また惨めになる事から逃げている。
だっていくらこっちが好きでも、その気持ちを相手が受け取ってくれなかったら…それはひとり芝居で惨めになるだけだから。
沢山の言い訳を重ねているうちに、いつの間にか身動きが取れなくなる。



