あぁー!
真央との誤解を解くのを忘れていた!
どうしよう。それを言おうと思っていたのに。
けれど、きっとしおりやたっくんは真央の事をばらさないだろう。何となくそんな気がした。
今度会った時にゆっくりと説明しよう。今度はきっと…本当の友達として本音で話が出来るはず。
引っかかっていたのは、しおりが教えてくれたあの花火大会の出来事だった。
私は何も知らなかった。陰で真央が私を庇ってくれた事さえ。そういう優しい人だっていうのはとっくに知っていたのに。あの人大切な事を何ひとつ話してくれないんだもん。
…言葉足らずだよ。そう考えればお礼を言いたい事が沢山あったのに。ありがとうだけじゃない。伝えていない事は沢山あったのに…。
「静綺はぴばー!!
今日ねぇ居酒屋さんに予約しておいたんだよーんッ。春香たちも来るって言ってた。
沢山集まるよぉ。楽しみだねぇー!」
「へぇーそうなんだー。楽しみ。ありがとうー!」
りっちゃんが私の腕を組んで、皆と一緒に歩き出す。
大講堂に着いて、窓際の席をキープしてくれていた友達と合流する。
色々な学科の人達が集まっていた大講堂は既に学生たちで賑わいを見せていて、ざわざわと騒がしかった。
窓際の一角に仲の良い友達が集まって、それぞれに携帯を見せあって話をしていた。それはいつもと何ら変わらない空気。
けれどその中にぽつんと座って、考える事と言えば――
いつだって、真央の事ばかり。
寮を出たあの日から考えない日は無い。いつだって毎日考える。



