私を嫌いだとハッキリと言う、しおりはいつもみたいにニコニコとはしていなかった。
それどころか少し苦しそうに、必死に涙を堪えているように見えた。
「えぇ…!でも私はしおりがずっと羨ましかったけれど…。だってたっくんにも譲にも好かれてさ。
私なんて誰からも好かれてなくって惨めじゃんか…」
「たっくんも譲も誤解してる…!
私より静綺が良い子な筈がないんだもん。
私の中にはすっごくドロドロとした狡い感情があるのッ…。
静綺の好きだった人が自分を好きになったからって嬉しかったの。静綺に勝てた気がして…
馬鹿らしいけれど、それが私の本音だったの!私って嫌な女でしょう?」
いや、それは嫌な女というか。私だってしおりがたっくんを好きになったのは仕方がなかった事だと言い聞かせて、それでもしおりとは暫く話したくなかった。そんな当たり前に嫌な気持ちはあるわけで。
けれど自分を嫌な女だというしおりの傷ついた顔は、どうしようもなく苦しそうで私やっぱりしおりが嫌な子だとは思えない。
だって私の中にはちゃんと記憶している事がある。しおりが一緒の電車になって声を掛けてくれて、仲良くなってからも一緒に居てずっと楽しかった。
一緒に笑い合った日々の全てが嘘だったとは思えない。
「あの…きっと誰の中にも周りに隠したくなるような汚い感情も狡い感情もあると思う。
それを私にハッキリと言ってくれるしおりが嫌な女とは思えないんだけど」
「お人好し!」



