「あの、彼氏は元気?姫岡…さん。」
「あーーあーーー…元気?だよね…多分」
まさかしおりの方からその話題を吹っかけて来るとは。
「良い彼氏さんだよね。芸能人だけど…」
「え、まあ……てゆーか私…しおりに言わなきゃいけない事があって…!」
「ごめんね!」
真央との関係を話そうとした瞬間、しおりがこちらへ向かって深く頭を下げた。
ロビーに居た学生たちの視線を一斉に浴びる。私は慌ててしおりの方へ駆け寄って、背中に手をあてると覗き込んだしおりの瞳には涙がいっぱい溜まっていた。
え?!何?何で泣かせてる?!
「え、ちょっとしおり…どうしたの…?!」
私、また何かした?!
「泣かないで…。ごめん…。私しおりに何かしたかな?」
顔を上げたしおりは腕で涙をグッと拭った。そして私の顔を見てハッキリと言ったのだ。
「私、実は静綺がずっと嫌いだったの」
女の子から面を向かって’嫌い’だと言われるのは初めてだった。
どちらかと言えば男の子よりも女の子から好かれる傾向が強かったのは、私の性格のせいだろう。
どうにもこうにも昔から男の子を前にすると意識する癖があって、そのせいでモテなかったのもあるのかもしれないが、それ故に幸いな事に私は女の子から嫌われる事は少なかった。
これがしおりの様に男の子から好かれるふわっとした女の子だったら、逆だっただろう。
女の敵とは女とはよく言ったもので、自然に異性と仲良く出来る女の子はやはり嫌われやすい。



