「別に…俺には関係ない話だし。」
「好きな癖に…いい加減素直になりなよ」
「好きだって今更どうしようもねぇだろ!お前と付き合ってんだろうが!」
昴の言葉にカッとなってついつい本音が漏れる。 あーダセー。俺って何やってんだろう。
「真央は今更どうしようもなかったら行動に移さないの?静綺ちゃんの気持ちに確証が持てないと想いも伝えないの?
それってただの意気地なしじゃん」
「何だと?!」
昴の胸倉を掴むと、真っ黒の大きな瞳は微動だにせずに俺をただただ見上げた。
けれど昴の言う事は図星だ。
俺は意気地なしの男だ。いや男らしさの欠片もない。相手の気持ちに確証が持てないとその想いも告げられずに、行動にも移さない。
だって昴と静綺は互いを思いやってるのに、そこに俺が入って行っても惨めなだけだろう?
掴んでいた手の力が徐々に弱くなっていく。離して直ぐに昴に背を向ける。
「確かに俺はお前の言う通り意気地なしの男だ……けれど…」
けれど、静綺に対する想いは本気だった。
その時ふと気づいたのだ。
何も行動に移さずに、想いも伝えずに、相手の為だと想いこの恋を投げ捨てようとした。
この先こんなに好きになれるような女に出会えないと分かっていながら、その想いを告げずにただ捨てようとするのは
大切な自分の想いを捨てるのと同じ事。
捨てたくても決して捨てれなかった演技への想い。それと同じくらい大切な想いだったのに。
その想いに気づかせてくれたのは、静綺だったのに――。



