もしかして静綺は俺の事が好きなのかも…。と感じた時もあった。けれどそれはどうやら俺の勘違いだったらしく、連絡の1本も寄こさない。
じろりと横に座ってシリアルを頬張る昴の横顔のチェック。悔しいけれど綺麗な顔をした男だ。これで性格も優しいんだから僻まない訳ない。
どこか飄々としていて掴みどころのない男だが、女に一途っていう事だって知っている。
「お前今日はオフか?」
「うんそーだよー。今日は’大切な用事’があるからオフにしてもらったのー」
その’大切な用事’とやらは静綺の誕生日つーわけか?
まさか夜からデートとか?おいおいそのまま自分のマンションに連れ込むとか考えてねぇよな?
誕生日なんだから…お前ももっと気を利かせて寮に呼ぶとか…。だって瑠璃さんや豊さんだって静綺に会いたいだろうし、あいつだって皆に会いたいだろう。
本当に気の利かない男だよ、お前は。
「真央は?オフ?」
「まあな。別にこの日を特別に空けたわけじゃねぇけど。’たまたま’な」
「ふーん」
くすりと笑う昴が憎たらしい。
そんな昴は驚く事を口にした。
「そう言えば俺真央には言ってなかったけれど…」
「あん?何だよ」
「俺とっくの前に静綺ちゃんに告白してるんだよねー」
思わず飲んでいたお茶をブッと吹き出す。
汚いなぁーと昴は迷惑そうな顔をして、ティッシュで零れたお茶を拭った。
口をぱくぱくさせたまま言葉にならずに、けれど開いた口は塞がらなかった。
…お前、いつの間に。何だよ。俺の知らない所でよろしくやってんじゃねぇのか。



