思わず目頭が熱くなっていって、涙がこぼれそうになる。それをグッと堪えて、真央へと笑顔を作る。
真央も不器用に笑ってくれたから、泣いてしまってはいけない。泣いたらきっと感情が溢れ出して自分の素直な気持ちを身勝手に吐き出してしまいそうだった。
「私は何もしてないよ。夢は真央の中にあった物だから。
あのさこれからは沢山真央をテレビで見て、画面の前で応援していくから…だからずっと演技の仕事を続けてね。
姫岡真央を沢山私に見せてね――」
最後まで本当の気持ちは伝えられなかった。
夏の夜空に消えて行った恋。
この恋の忘れ方があるのならば、教えて欲しい。
あなたが掛けてくれた魔法はいつか解けていってしまうだろうか。自然にたっくんを忘れて行ったように。
いつか、自然にここで過ごした夢のような出来事を思い出に出来るのだろうか。
想いを告げる事もなく、夏の恋は幕を閉じた。