「そうねぇ、そんなに真央が私に会いたいならたまになら来てやってもいいけど」

けれど天邪鬼だって言うのならば、私だって大概だ。人の事は言えない。

「初めて会った時から生意気だとは思っていたけれど、やっぱり生意気」

フンッと鼻を鳴らして生意気そうに笑う顔。
私達は、どこか似ている。きっと真央も言葉にしなくても分かっていると思う。

ふと、どこを見ているか分からない視線に何を考えているか分からない表情をする時がある。

そういう時は決まって言葉を選んでいる時であって、彼は私の方へ右手を差し出した。 その手を取ったら、暖かい温もりが体いっぱいに伝わって行く。

ぎゅっと強く握りしめて、その手を離したくなかった。このまま時間が止まってくれたら、とどれだけ考えた事だろう。

「ありがとう……」

「何がよ?」

「俺の話を聞いてくれて、ありがとう。
いつも隣で寄り添ってくれて、ありがとう。
お前に出会えたからもう一度自分の夢を確認出来たと思う。
もう芸能界なんて引退してやろうかとも考えた日もあった。…それでも俺は――演技をしたかった…。
俺の夢を守ってくれて心から感謝している」