「でも本当に嬉しかったんです…。ありがとうございます。こんな私を好きになってくれて…」
「こんな私なんて言うなって。静綺ちゃんは自分が分かっていないだけで素敵な所が沢山ある女の子なんだから」
ごめんなさい。
本当にごめんなさい。
振ってしまったのに、そんなに素敵な笑顔をくれて、優しい言葉をくれる。
こんな人を好きになれれば幸せだった。こんな人と付き合えれば幸せだったのに…。
立ち上がった昴さんの視線の先に、真央と岬さんの姿がある。こちらを振り返ってニコッと小さく笑って風のように走り去って行った昴さんは、真央に腕を絡ませる岬さんの手を取って走り出した。
「ちょっと!昴ッ。何すんの」
「うるせ!」
「誘拐犯ーーーーッ!」
岬さんの声が空にこだまする。
その様子を見て皆笑っていた。
取り残された真央は、立ち止まりこちらを見つめている。
…昴さんもしかして、私と真央をふたりきりにする為に?…やっぱり優しい人だ。私の気持ちを知ってて、何故人の為にそこまで出来ると言うのか。
無表情のままゆっくりとこちらへ歩いてきて、私の目の前で腰をおろす。
今日ふたりきりになるのは初めてだ。
何から言い出していいか掴めぬまま、目の前に散らばった線香花火ばかりを見つめていた。
真央はそれを二つ手にもって、ライターで火をつける。ぱちぱちと小さな火の粉をまとった線香花火が静かに光りを放つ。
それをひとつ私の方へ差し出し、その光りをジーっと見つめていた。真剣な表情をして――



