「なーにひとりでしんみりしちゃってるのさ」
軽快にこちらへやってきて、隣でしゃがみこむ昴さんの手にも線香花火の束。
顔を上げたら、いつものように優しい微笑みを落としてくれる。…本当に良い人だって分かるんだけどな。かっこいいだけじゃなくって、優しい人だって分かるのに。
どうして私は真央じゃなきゃ駄目で、真央の事ばかり見てしまうんだろう。
「私線香花火って1番好き」
「分かる。俺も。何か線香花火を見ていると夏が終わるって切ない気持ちになるけど、好きだよ」
「あ。それ私も分かりますッ。派手さは無いんだけど、強い光りを放っていて……。地味なんだけど、最後に選ばれるみたいな…」
「静綺ちゃんみたいだね」
顔を上げて昴さんは顔をくしゃっとさせて笑顔を見せる。
「え?!私ってそんなに地味?どっちかと言うと派手顔だと思うんですけど…てか、この派手顔もコンプレックスのひとつで」
「違う違う。強い光りを持っていて、結局人が最後に選びたくなる存在というか。一緒にいて落ち着くもん」
そんな大それたもんじゃない。昴さんの中で私の評価は高すぎる。
でも…勇気を出して言わなくっちゃ…。いつまでもハッキリしないのは昴さん自身も傷つけてしまう。
手の中で、線香花火の光りが大きくなったり小さくなったり
けれど昴さんは線香花火越しに、柔らかい笑顔を浮かべたまま私を見つめ続けてくれた。
誠実な人なんだと思う。芸能人という色眼鏡で見ていたのは、もしかしたら私の方だったのかもしれない。



