【完】スキャンダル・ヒロイン


私の水着を見て直ぐに可愛いと言葉にしてくれた。私と違って素直な人なのだろう。
嬉しい言葉ばかりを掛けてくれて、こんなに優しい人なんてそうそういないよ。

「昴さんに可愛いとか言われると照れちゃうよ…」

「本当に可愛いと思ったんだって!女の子は皆特別な場所で見ると可愛いと思うけど、静綺ちゃんだけは特別。
特別に違って見える。」

余りに必死な昴さんを見るのも珍しい。言い切った後に昴さんはほんのり顔を赤くして、それを隠すように片手で顔を覆った。

「あー…俺何可愛い連呼しちゃってんの?はずかし…
でも人を好きになると余裕なんてなくなっちゃうんだよな…」

「ちょ…そこまで言われたらこっちまで恥ずかしくなっちゃう。…ただでさえ昴さんはかっこいいのに意識しちゃう…」

そう言うと、昴さんはするりと水の中に潜って、私の入っている浮き輪の中に入って来た。

少しでも動けば昴さんの体に密着してしまう。目の前に水に濡れた美しい顔。真っ黒の大きな瞳が私の視線を掴んで、離さない。

「もっと意識してよ……」

低いけれど優しいトーンでそう言った。その言葉が私の鼓膜を心地よく揺らしていく。

「もっと俺の事だけ考えてくれて、静綺ちゃんの頭の中俺だけになってくれればいいのに…」

大きな手が私の頬に触り、思わず体がビクッとなる。その反動で昴さんの体とますます密着してしまう。

「や、止めてください……」

「やだ。止めない。」

「困ります。皆が見てる…!」

「誰か見られて困る人がいる?」