ぎょっ!私何やってんの?!
’ありがとう……’
今日不器用に笑ってそう言ったあいつの顔ばかり思い出すなんて。
それだけじゃない。私の頭の中、あいつの顔や声でいっぱいだ。
一体いつからこんなに男の趣味が悪くなった。今からでも昴さんの告白を受けるべきよ!
悪魔の囁きが頭の中で響いたけれど、思い出す事と言えばあいつの憎たらしい笑顔ばかり。少し掠れたハスキーボイスばかり。
「ごめんなさい。私…昴さんとは付き合うとか出来ません」
行かなくちゃ。そう思った。ずっと胸に引っかかってた。真央の体調が心配だった。あいつの事だから無理をして、けれど辛い事は口に出さなくって
本当は体も心も弱い癖していつも強がってばかりで
でも強くないからこそ好きになった。そこにあった人間らしい姫岡真央が私は好きだ――。
「昴さんごめんなさい。私行かなくっちゃ…」
走り出そうとしたら、腕を掴まれ引き止められた。
昴さんは呆れたように笑っていた。もうすっかりいつもの余裕を取り戻していて。
「真央の撮影しているスタジオなら俺が居なきゃ入れないよ」
「昴さん…」
「はぁー…自慢じゃないけど俺これでも女の子に振られた事ないからさ。かなーり今ショックなんだけど」
「す、スイマセン!それは昴さんが悪いとかじゃなくって…」