Act9  これは人生で最良の日?




その日、真央は坂上さんとは一緒には帰って来ずに共演者と飲みに行くと言った。
そして夜中に酔っぱらった真央を寮に連れてきたのは

南条 岬――

今乗りに乗っているアイドルグループのセンター。そして真央の元カノ。
アイドルなんて初めて見た。このバイトを始めてから芸能人とは知り合いになったけれど。

ふわふわのシフォンワンピースに身を包んで、綺麗で真っ直ぐな長い髪の毛。零れ落ちそうな程目が大きくて、女の子らしくて可愛い。

とにかく可愛い。私が今までの人生で見て来た中の女の子で、1番可愛かった。


真央の隣にいて遜色がなくお似合いだった。違和感がない。それにとてもショックを受けてしまい、真央の顔が見れなくって思わず目を逸らしてしまった。

真央のあんな風に酔っぱらって人に気を許す姿も初めて見たし、隣で寄り添い合うふたりはどう見ても恋人同士にしか見えなかった。

そんな彼女の小さく柔らかそうな唇から、私の名前が出た時は驚きだった。

「静綺ちゃんですかぁ~?」

おっとりとした話し方で、声まで可愛らしいなんて狡い。
女の子の欲しい物が全部その中に詰まっている、理想的な子だった。

「真央から話はよく聞いてます。元カノっていってもまだ全然仲良しなの。
だから撮影の後もこうやって飲んだりしててー…」

「へぇ…そうですか…」

こんな可愛い子を前にしてますます惨めになる自分。彼女の唇に乗っているピンクのリップとチークがよく似合っていて思わず見とれてしまう。