ヤキモチを妬かせようったって、妬いてはくれないだろう。それなのに俺は何を無駄な事を。
素直になって優しくしてあげたいと思うばかりなのに、行動や言動は真逆になってしまう。
坂上さんや昴に優しく笑いを掛ける静綺をただ見つめる事しか出来なくて、自分の不甲斐なさを嘆くばかり。
「お前って馬鹿だねーー……」
車に乗り込んだ途端昴が呆れたように口を開く。
キャップを深く被り、長い脚を伸ばして。やっぱり生意気な奴だ。俺より足が長いってアピってんのか?!
キャップのつばを上げて、大きく丸い瞳をこちらへ向けてジーっと見つめてくる。なんつー綺麗でいて男らしい顔をしていやがる。悔しいけれど男前なのが憎い。
こいつは出会った時からこういう奴だった。グリュッグには10代の頃にスカウトで入った。裏表もなく人懐っこい性格をしていて、昔から良い奴だった。
共演者やスタッフからも評判が良くって、それは売れっ子になった今でも変わらない。ここ1年で人気がうなぎのぼりなのも、別に俺が活動を抑えていたからではなくって、昴ならばいつかどんな形であってもブレイクしていただろう。
「何の話だ?」
「もっと素直にならなきゃ相手に気持ちは伝わらないよ」
昴の全てを見透かしたような言葉に苛立ちは募る。
そんな事を言うならば、何故俺を煽る行動ばかり取る?!あいつと一緒に出掛ける約束をしたり、わざわざこのおんぼろ寮に住んだり。
「何か勘違いをしていないか?」
「ん?」



