「ちが……静…」

「私の事そういう風に見てたんだね!」

「静綺!」

立ち上がり部屋から出て行こうとする私の肩を掴み、それを引き止めようとする。
けれど私は真央をずっと睨みつけたまま、一瞬だけ足を止める。

「あんたなんて大っ嫌い!」

捨て台詞を残してそのまま逃げるように部屋を飛び出した。
自分の部屋に戻ってきて、ベッドに入り布団を頭から被ってずっとずっと涙が止まらなかった。

「う…ヒックヒック…さいってー……」

’相手が有名な奴なら誰でもいいんだろう?’


違う――。絶対そんな事ない。

私、姫岡真央っていう芸能人を好きになった訳じゃない。普通の人として、姫岡真央を好きになっただけ。

有名な人だからじゃない。人気俳優だからでもない。色々な顔を見て、見たことのない一面を知って行って、段々と好きになった。

誰でもいいわけじゃない。

どうしたって伝わらない想い。それならばずっと胸の中に閉じ込めておきたかった。私の中に我が物顔で入り込んできた感情を、どうにも出来ないのならばこんな気持ち捨て去ってしまいたい。