「どうせ芸能人だからいいとでも思ったんだろ?そういう女ばかりだ…。
昴昴騒いであいつと一緒にデートするってはしゃいでた割には、お前って誰でもいいんだな?
どうせ芸能人の寮に入って、相手が有名な奴なら誰でもいいんだろう?
何が俺が昴に負けてもないし劣ってもいないだ…。そんな良い事ばかり言って、陰ではどうせ俺の事なんて馬鹿にしてんだろう…」
好きな人とのキスならば、それは幸せな筈だった。
けれどその軽蔑を含んだ言葉を前に、体中が震えあがる。
あんたは、私をそういう女って見ていた訳ね?今のキスだって何の意味もない。演技と一緒で、どこにも気持ちの入っていないキス。
それでも私は――こんな形であってもあんたとキスを出来た事を少しでも喜んでしまったのが、本当に馬鹿みたいね。
馬鹿だし、惨めだ。誰でも良いなんて思われていたなんて。
私は昴さんの事を好きじゃない。
私が好きなのは――。
伝えたい。伝わらない。目の前で背中を見せる真央の姿がどんどんぼやけていく。
気が付けば、瞳いっぱいに涙が溜まっていた自分がそこには居た。
ぼろりと涙が流れ落ちて視界がクリアになっていく。振り向いた真央の茶色の意地悪な瞳が大きくなっていって、私の頬へ手を伸ばそうとするのが分かった。
それを拒絶した。手を振り払って、睨みつける。すると彼の視線はどんどんと下へ落ちて行って、振り払われた手の甲を見つめていた。