「もぉー…何やってんの、真央ー…。子供みたいに急いで食べるからだよ?」

「人を…ゴホッ子供扱い…ゴホッ…するな…」

隣に座る昴さんが真央の背中をさする。
私は慌ててティッシュを真央に渡そうとするが、反動で横に置いてあったグラスに手をかけてしまい水が零れだした。

「静綺ちゃんまで何やってんの?」

「ご、ごめんなさい!」

やっぱり私どこかおかしい。真央がおかしいのは元からだけど、まるでそれが伝染してしまったかのように…。

もっと気を引き締めなければ…。私はバイトでここへ来ているんだ。所属タレントを意識してしまってどうする。


頭を冷やすように後片付けをしていた。けれど…ここの寮は皆仲良しと言うか…今日も山之内さんと坂上さんスタッフ組はまだ帰って来ない。

仕事を終えた4人はテレビを囲んで、あーだこーだ話をしている。昴さんも1年前まではこの寮で暮らしていたから仲が良いのは分かる。

けれど傍から見るととても微笑ましい光景で、瑠璃さんが皆を盛り上げる長女で、3人が3兄弟みたい。その中にいる真央はまるで末っ子のようで、皆から弄られキャラなのである。

昴さんの方が素敵なのに…昴さんの方がかっこいいのに…昴さんの方が背も高いのに、どうして私の視線は真央ばかり追いかけてしまうのだろう。

テーブルの上にクッキーを出すと、瑠璃さんとパアッと顔が綻んだように喜ぶ。

「昨日山之内さんが差し入れで買って来てくれたんです。
瑠璃さんミルクティーで良いですか?」