真央はもう南条岬の事で動揺はしていなかった。ただただ嬉しそうに脚本について喋り出した。
そんな嬉しそうな彼に相槌を打ちながらも、私は全く別の事を考えていた。そんなのって最低だ。せっかく真央が仕事をやる気になって、こんなに嬉しそうに演技について話をしてくれているのに。
私の頭の中は南条岬の事でいっぱい。そして彼女と真央の恋物語を想像しては落ち込む。いつから私の頭の中をこいつが占める割合が多くなったのだろう。
完璧に意識してしまっている事に自分で気が付いてしまった。
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「それでさぁー撮影現場に犬がいるんだけどめっちゃ懐かれてさぁ」
「昴って犬にも好かれるんだねぇ、瑠璃犬って苦手。」
「でもあいつ雄だったけどね」
「昴さんは男性ファンも多いでしょう?僕の芸人仲間でも昴さんなら良いって言う人多いですもん」
「げぇ、それは勘弁。もしかして豊さんも俺の事狙っちゃってる?」
「もしかしたらそれもありえるかもしれないですねぇ」
「ちょっと…豊さんって真面目な顔して冗談言うからそれが冗談に聞こえないんだけど…怖!」
「あはは~。でも瑠璃、豊と昴結構ありかなーて思う。BL的に」
「BL的に考えないで下さいよ~」
夕食の時間がパッと明るくなるように感じるのは、昴さんの天真爛漫な性格のお陰だ。
けれど私は皆の話に入らずに、向かいで黙々とご飯を口に運ぶ真央の事ばかり気にしていた。
ばちりと目が合うと何故か真央は顔を真っ赤にさせながら、口をパクパクと金魚みたいに動かした。 そして食べていたご飯を吹き出して、苦しそうにゲホゲホっと咳をする。



