「おい、話は終わったか?」

「ぎゃ!」

真後ろに突然姫岡さんが立っていて、恨めしそうな顔をしてこちらへ顔を近づける。
そして姫岡さんから少し離れて、しおりと譲が冴えない顔をしてとぼとぼと歩いている。

こちらと目が合えば、しおりはツンと顔を背けてたっくんの方へ駆け寄って腕を握る。譲はその様を切なそうに見つめていて、まだしおりが好きなんだなぁと切ない気持ちになる。

「フンッ。行くぞ」

無理やり姫岡さんに手を引っ張られて、走り出す。

「じゃあ。バイバイ!」

そう言い残して3人の前を後にする。強く握りしめられたてのひら。ぐいぐいっと無言のまま先に進んでいって、気が付けば人気の少ない河原の端っこに連れていかれた。

周囲に人の影はちらほらとしかいなかったが、そこは花火がよく見える絶好のポイントだった。

そういえば…花火大会だというのにまともに花火さえも見れていなかった。丁度花火も山場を迎える所で、様々な色が溶け合った夏の花が空いっぱいに大輪の花を咲かせる。

「さっき見つけたんだ。中々綺麗に見えるポイントだろ?」

そう言った姫岡さんの横顔を見つめる。

頭上では美しい夏の花がカラフルに散らばって行くというのに、何故か私はその美しい横顔から目が離せなくて

花火ではなくて、姫岡さんの顔ばかり見ていた。なんて綺麗な人だろう。花火の光りがまるでスポットライトのように見えて、眩く強い光りがまるで姫岡さんに降り注がれているようで、そこから目を離せなくなってしまう。

茶色い瞳がこちらを見つめたかと思えばパッと目を離してしまって、繋がれたままの手を振り切った。

私心臓がおかしい。どうしてこんなにドキドキして、体が熱くなっていくのだろう。