たっくんは気まずそうに落としていた視線を上げて、私の方を見つめた。
そしてその場で深く頭を下げた。

「静綺、本当にごめん。俺……静綺をいいなって思っていたのは本当だったんだ。
こんな俺に好きって言ってくれた事も嬉しかったし、静綺の事を意識してたのも嘘じゃない。
でも4人で遊ぶようになって、しおりの女の子らしい所に段々と惹かれていって…譲としおりが良い感じなのも分かってたし、譲がしおりを好きなのも分かってたけど…自分の気持ちを止めることが出来なくって…
静綺に何も言わずに…本当にごめん」

その謝罪が心からでも口だけでもそれはもうどうでも良い事だった。
心がスッと軽くなるのを感じていたから。

「もういいよ。たっくんが謝るような事じゃないしね。」

「でも俺…ずっと後悔してた!静綺に思わせぶりな事ばかり言っちゃって…。
それに譲が何かごめん…俺、静綺がそういう子じゃないって知ってるのに、何も言い返せなくって…」

「もう全然そんなの気にしなくっていいよ!
でもまあー…バイトも忙しいし、こうやって4人で会うのも気まずいからもう止めようね!」

「バイト?
静綺、今バイトしているのか?」

しまった!口が滑った。
あはは~と誤魔化すと、たっくんは昔のようにふわりとした笑顔を見せた。

その笑顔を見てももう切なくならなかったから、この失恋は完全に完結を迎えれたのだと思う。…悔しいけれど、強引な姫岡さんのお陰で。

けれど話をしなかったらモヤモヤは募ったままでこの恋を消化出来なかったかもしれない。そう考えれば姫岡さんには感謝でしかない。