周りに友達が集まってきて、しおりへの悪口はヒートアップしていく。だからこういう状況になるのが嫌なんだ。
「でもさ人の気持ちって理屈じゃどうにもなんない事もあるしさ」
「静綺お人好し過ぎるよ……」
大学に入って4年。
しおりが女の子たちから好かれる性格ではないのは知ってた。噂で聞いただけだけど…高校時代に友人関係で上手くいかなくなって拒食症になったらしい。
何が真実かは知らないが、しおりは確かに痩せていてどこか頼りなげだ。
大学に入ってからも周りからの評判は余り良い女の子ではなかった。男の前ではぶりっ子だとか、ずるい性格だとか。
私は決してお人好しではないと思う。しおりを庇うつもりはないが、この事実を大ごとにはしたくなかった。誰からも選ばれない惨めな女だと周りから言われている気がして。
だから決してしおりを守った訳ではなく、ちっぽけな自分のプライドを守ったのだ。
「あ、来たよ。よくしれっと授業に来れるわー。今日だって男にさっそく送って貰ってるんでしょ?」
しおりは私達より前の席に腰を下ろした。そして仲の良い…。恐らく私の好きな人を盗ったと吹聴した友人と笑って話をしている。
それはそれで切ない。
私はしおりが嫌いではない。たっくんと付き合った今でも…ほんのちょっぴり憎らしくはあるが…嫌いにはなれない。
だって信頼していた友達だったんだ。しおりはどう思っていたか知らないが。たまたま通学の電車が一緒になった大学1年生の時に話を掛けられて、素直になんて可愛い子なんだろうと思った。
それに明るくて優しくて、羨ましかった。こんな女の子になりたいって。



