「静綺、聞いたよ?」
話を掛けてきたのは、違うグループの女の子たちだった。
男の子と話すのは苦手だったけれど、女の子の友達は何故か沢山いた。最初は怖がられたり、性格が悪そうと思われがちなのだが、実はヘタレだと知られると途端に女の子たちからは好かれるのは昔からである。
それをもっと男性へのモテへ持っていきたい所だ。そんな訳でグループを超えて友達は多い。
話しかけてきたのは、情報通で友達の多い春香だった。
「え?何?何?」
「しおりに男盗られたんだってー?もう噂になってるよ。
しおりと仲の良い子が彼氏が出来たってしおりから聞いて、それが静綺の好きな男だって」
もう最悪だ。思わず卒倒したくなった。
皆こぞってその話を「何?」と訊いてくるもんだから、このままこの場から消えてしまいたい。
こういう状況が嫌だったのだ。 だってそれは惨めだろう。恥ずかしくて自分という存在を否定してしまいたくなる。
「一部の女子がめっちゃ怒ってる」
いひひと笑いながら春香は楽しそうに話をする。
「普段の行いつーか…しおりは女の子から嫌われるタイプだもんね。
元々好かれちゃいないしさー」
「あの、春香…。しおりが悪い訳じゃあないからね?
私とたっくんは付き合ってる訳じゃなかった。だから盗られたっていうのは語弊がある」
「えー?でも酷くない?」
「そうだよ。静綺がたっくんの事好きだってしおりは知ってたんでしょ?
協力してくれてるって言ってたじゃん。それなのにそれは無くない?それにしおりにもいい感じの男がいるって言ってなかったっけ?」



