涙の先にあるのは、きっと

他の子が当たり前のように家族としていることが、私には許されなかった。私はあの家では必要なくて、死んだってきっと誰も泣くことはない。だからこそ、こうして自分だけが泣いていることが苦しいんだ。

しばらくすると、荒い呼吸は徐々に通常の呼吸に戻っていった。過呼吸が治ってくれてよかった。学校へはきちんと行かないと……。

裏路地からひょこりと私が顔を出すと、「あれ？亜梨沙ちゃん！おはよう！」と声をかけられる。私の胸がドキッと跳ねた。

「愛ちゃん、おはよう」

長い黒髪を揺らしている美人なこの女の子は、三田愛（さんだあい）ちゃん。私の親友で幼なじみ。お父さんは弁護士、お母さんは歯科医師として働いているから大きな家で暮らしているお金持ちのお嬢様。でも、とても優しくてまっすぐな人なんだ。

「目、真っ赤だよ。またお父さんたちと喧嘩したの？」

愛ちゃんが私をジッと見て言う。その目で見つめられるたびに怖くなるんだ。この隠している気持ちがあふれるんじゃないかって。