「亜梨沙、お誕生日おめでとう!」

「亜梨沙はお父さんとお母さんの自慢の子だよ」

お父さんとお母さんが笑い、私ーーー水野亜梨沙(みずのありさ)はニコニコ笑っていた。目の前にあるのは、火のついたろうそくのある大きなケーキ。今日は私の八歳の誕生日だから。

あれ?お父さんたちの顔に黒いモヤがかかり始める。どうして?……ああ、そっか。これは全部夢だからだ。いつの間に忘れてたんだろう。私だって昔は二人から愛されて、この家に居場所があったってこと。

気が付けば涙があふれてくる。別に決め付けていたわけじゃない。それでも現実があまりにも惨めすぎて、夢でも現実でも泣いている。

遠くから目覚ましの音がする。ああ、また苦しい一日が始まる。何をされても平気な顔で強がって、誰にも見せない涙を流して。

誰か、助けて……!!



目を覚ますと、やっぱり泣いていた。私はその涙を拭い、目の前にある景色を見つめる。埃のかぶった荷物が積まれ、狭くて暗い部屋。私の今の居場所は、この物置部屋しかない。