朝倉コーヒーが今のような全国規模になったのは、兄の代からだ。
それまでは、地元に愛されるコーヒー店で、数店舗しかなかった。

「いや、それが普通。
一般的な考えだ。
間違ってはないと思うよ。
でもな、蓮はもうこっち側の人間なんだ。
身を守るために、人間関係は選べ。
見極められるようになれ。
それが愛する人を守る事にも繋がる。」

「…はい。心に刻んでおきます。」

「ま、隙を見せないためにも、呑みに行く時は
安全な相手とrockabillyを使え。
あそこなら、櫂人が見張っていてくれる。
それに櫂人が客を選んでる。
その為の“会員制”だからな。」

「俺、もうアルコールはいいです。
…ロクなことない…。」

「ハハ!
新しい蓮が見られて楽しかったぞー!
また行こうな。」

「…ノンアルコールなら行ってもいいです。
櫂人さんのピザ、美味かったです。」

「そうか。
櫂人が喜ぶなぁ。

……蓮、俺の結婚式まで後ひと月だ。
もちろん愛は出席する。
蓮も裏方を含め、出席だ。
何か、俺にできる事があれば言ってくれ。」

斎さん…

「有難うございます。
お気持ちだけで。
愛が話を聞いてくれる事を祈っていてください。」