「勉強頑張って」

「あ、はい」


お母さんは下から私を見送ると、奥にあるキッチンに消えていった。


懐かしいな。

昔はよくこの階段でグリコしてたっけ。


そうだ。負けず嫌いだった私はビリになった時は大抵泣いてて、よく壱兄ちゃんに慰められてた。


アイツは…この前、あの頃の私と比べて、強くなったと言ったのだろうか。


強くなったかは分からないけれど、泣くことは確かに少なくなった。

それもこれも、壱兄ちゃんのおかげだ。


アイツの部屋に入るのも本当に久しぶり。


ノックをすると、「はい」とアイツの、昔と比べてかなり低くなった声が聞こえる。