透明な世界で、ただひとつ。



「ついてない?」

「うん、大丈夫。」



私はその言葉を聞いてランチセットのレモンティーに手を伸ばした。



「あと20分ぐらいで出よっか。」

「うん、今何時ぐらい?」

「3時半前。」



そっか、とマグカップに口をつけた。



「堺ってさ、甘いの好きなのに飲んでるのはカフェラテなんだね。」

「普段は甘いのと一緒に飲んでるけど、今のは砂糖入りだし。」

「あぁ、その細長い白いのってお砂糖だったのね。」



ふと、2人でファンシーなカフェに行った時のことを思い出した。

大きなパフェの生クリームをスプーンで掬って食べていた堺の姿を思い出すと今でも胃もたれがする。



「甘いものね...この前梓さんも大量のチョコ食べてたな、ホント姉弟して甘党極めてるよね。」



事務室がチョコの匂いで包まれていて、私の隣のデスクには包み紙のゴミが山積みにされていた。