透明な世界で、ただひとつ。



「なんかコツでもあるの?」



私がそう言うと堺は片口角をあげて“教えてあげる。”と言った。

私はボールの表面に触れ、穴を探す。

レンズ越しでもすぐには見つからず、一苦労してからボールを持ち上げた。



「胸の前でしっかり構えて、そう。
あ、そんなに力まないでいいよ。

中央のピンの少し向こうに投げるイメージ持ってね。」



私は堺の言葉通りにぼんやり映る白い的の少し奥を見据えた。



「ね、私まっすぐ立ててる?」

「ん、ちょっとこっち。で、頭の向きはこう。」



堺は私の言葉に肩や頭にそっと置いて中央に向けてくれた。



「ふふっ。」

「何笑ってるの?」

「なんでもない。」



小さく笑いをこぼした私に堺は投げ方指南をつづける。



「投げる時は投げ落とすんじゃなくて、押し出す感じ。

勢いはそんなにいらないからやってみ。」