透明な世界で、ただひとつ。



一歩わずか十数センチの歩幅を重ねてレーンの真ん中に立つ。

重たいボールを白い的に向けて転がし投げる。
ボールは手を離れてしばらくしてスピードをどんどん落としていく。



のろのろとレーンを滑るボールは辛うじてガーターをよけて、端を少しだけ倒して消えた。

二投目も同じようなコースを辿り、2本のピンを倒して見えなくなる。



「さっきと違うように投げたつもりなんだけどな...」



軌道を変えようとしてもどうにも同じように進んでしまう。



ボールを構える堺の背中を見つめる。

なんかコツでもあるのかな、と考えた。
投じられたボールは本来の重さを感じさせない音とスピードでピンへと向かっていく。

ボールは中心のピンにあたり、ぼんやり見えていた白い影は全てなくなった。



見事にストライクを決めた堺は軽い足取りで戻ってくる。