透明な世界で、ただひとつ。



「え、上手いんだけど。」



眼鏡をかけて見たタブレットのスコア表には、堺の列に次々スペアの記号が並んでいく。

対して私はガーターもまじって、数本ずつしか倒していない。



「あれ、瑞希には子供用のガードが必要だった?」



そうやってからかってくる堺からそっぽを向いてドリンクに手を伸ばした。

意味もなくいじけながらジンジャエールを口に含む私の前で堺はまた難なくスペアを決めた。



こうやって笑ってくれるのも堺の優しさだってわかってる。

私の目が見えなくなってきたからと言って、こういった所で特別扱いをするわけではない。



頬に空気を詰め込んで、ぼんやりと映る堺の顔を見上げる。

なんで、そんなに上手く倒せるわけよ。



拗ねないでよ、と私の頬をつついてくる堺を無視して空気をためたままボールを拭いて穴に指をさしこむ。