透明な世界で、ただひとつ。



外に出るもう既に堺が立っていて、おはよ、と爽やかに笑う。



「どこ行くの?」

「まずはボウリング。瑞希と行ってみたかったんだよね。」



堺に手を引かれて歩く。

ものの形さえ捉えられないこの視力でも、こうやって連れ出してくれる堺には感謝してもしきれない。



バスに揺られること20分強。

ボウリングなんていつ以来だろうか。

いつかに見たボウリング場の景色と同じようには見えないけれど、あたりに広がる喧騒とか空気感とかで、ここがボウリング場だと理解するのは容易だった。



「あ、ここ段差。気をつけて。」



白杖を小脇にかかえたまま、堺に手を引いてもらって指定されたレーンに向かう。

堺は十分すぎるほどに私を気遣ってくれる。



タブレットに規定事項の入力してゲームを始めた。