透明な世界で、ただひとつ。



傘とコートを預けて、リビングに通された。




「ご飯は食べたでしょ?お蕎麦は?」

「食べてない。」



私の返答に堺は台所の方へ向かった。

すぐに出汁のいい香りがしてお蕎麦が2人分運ばれてきた。



「え、わざわざ...」

「食べて。」



私の座る目の前に器と箸が並べられる。
堺の目線と出汁の香りに負けて箸を取った。
湯気越しにあった目はやわらかく目尻が下がる。

今年の年越しそばはいつもより少ししょっぱかった。



それから2人でテレビの前に座り、私の持ってきたおかしを開けて年明けと日の出を待つ。
テレビのVTRが流れている中、遠くで除夜の鐘が鳴り始めているのが聞こえていた。