透明な世界で、ただひとつ。



「初日の出?」

《そう。》



その電話がかかってきたのは30日の昼過ぎだった。

堺はクリスマス以降、当たり前に毎日電話してくる。



「ねえ、私が仮にも受験生なの忘れてない?」

《だって、入試ってほどのものもないんだろ?》



別に遊びに行くのは問題ない。

ただ初日の出だ。
つまり辺りは真っ暗。



私にとっては何も見えないに等しい。

それはさすがにリスキーすぎる。



「私、暗いの苦手なんだけど、どこ行くつもり?」

《うちの近所に穴場があるからそこかなって。
あ、でも風邪ひいたら大変だし、うちくる?》

「え?」



私はその言葉に思わず目を丸くする。



《うち、大晦日は家族いないからさ。

その穴場と同じぐらいよく見えるし、寒くないし、明るいし、飲食可。
どう?》

「そこまで言われたら、行くしかないじゃん。」



私は笑いながら答えた。