透明な世界で、ただひとつ。



同い年のバイトの店員さんで、私が来るといつも笑顔で迎えてくれた。
今思えば、あの人が唯一の友達だったように思う。

でも一年ほど前に持病で亡くなったと聞いた。


悲しくて悲しくて仕方なかったけれど、それでも涙は出なかった私は薄情だと思う。



甘くも感じるケチャップと、分厚く切られたしょっぱいベーコン、少し苦いピーマン。

いろんな味覚が私を惑わす、でも。
それがやめられない。



「瑞希にとって、ここが一番好きな場所?」

「うん、静かで落ち着くから。」

「ほかに好きなのは?」



私はこたえを探して、周りを見回した。
好きなもの、場所、そんなのは堺と話すようになるまでは考えることなんてなかったから、聞かれると答えにくい。