透明な世界で、ただひとつ。



「俺が畑と話したくて話しかけてるんだから、やめてくれない?」



確かに、私から堺にちょっかいかけたことはない。



「正直いって迷惑なんだよね。

俺も畑もそんなことしてもらう義理ないし、それにそういうことするような子と仲良くする気はないから。」

「な!私たちは蒼汰のためにやってんのに!」



逆ギレした彼女たちは漫画か、とツッコミたくなるほど分かりやすく、顔を真っ赤にする。



「もう知らないわよ、蒼汰も畑瑞希も!」



鞄を持っていた1人が逆上し、鞄を池に投げ捨てた。

まずい、と思った時、堺が鞄目掛けて池に飛び込んだ。



次の瞬間、ザバンという音とともに堺が池の中に落ちた。

その手には鞄がしっかり持たれていた。