染谷先生が俺に頭を下げた。

本来なら、何年も先輩で目上の先生が後輩の俺なんかに頭を下げることなんてない。

けど……今日に関しては理由は明白だった。

「はい。ちゃんと、染谷先生が守り続けてくれたバトン、繋ぎますんで。」

「……うん、よろしく、ほんと、よろしくな。」

そう言った染谷先生の声は少し震えていた。








手術の準備の時間も近付き、手術室へ向かう前に再度簡単な説明をするためになつの病室へ向かう。

ノックをしてから部屋に入ると、なつは既に手術着に着替えており、テレビで子ども用の教育番組を見ていた。

「なつ、おはよう。」

「あ、せんせー、おはよう。」

今日は抗がん剤治療を行っていないから、副作用もなくいつもより体調の良さそうななつ。

機嫌もココ最近のなつと比べると良いように思える。

「今日の手術のお話をしにきたよ。昨日も話したけど、一応確認ね。」

簡単な図解の資料を見せながら、軽く説明をするとなつもうんうんと相槌を返してくれる。

「じゃあ、この後は時間になったら看護師さんがお迎えに来るから、看護師さんと一緒に手術するお部屋に来てね。」

「わかった。」

慣れてるからか、あまり他の小さいこと比べて怖がる様子はない。

とりあえずほっとして、部屋を出た。