ぁぁ。まさのタバコの匂い。
高校生だからダメだよなんで突っ込まないで。

少しだけまさが大人に見える。
普通の友達なら止めるんだろうなあ。

箱を片手にベランダに吸いに行く彼の背中は
なによりも不思議な世界な気がした。
いつか連れ出してくれるのかな、私のことも。
そんなことを考えながら
私より少し背の高いまさを見つめる…


「お前は半田に止められてるからダメ」
「あー私も吸ってみたい」
「吸いたいって未成年はダメだからね?」
「まさもダメじゃん」
「俺はいいの」

タバコを吸ってる時はなぜかあの
ムードメーカーという存在から少し離れた
裏のイメージがする。
笑わないわけじゃないけれど、
いつも無理して明るく振る舞ってるのかと
少し疑いたくなってしまう。

スマホをいじりながら、まさは布団を
引っ張り始めて眠いと言い出した。
ウトウトしながらスマホを見ているその
横でまさを見つめている私。

こんなに近くで見ていられるのに。
こんなにそばにいられるのに。

これは奇跡なのではないかと思うくらいに
その時間が幸せだった。
でも、きっと1ヶ月後、ここでこの
横顔を見られるのは私じゃないと
薄々感じていた。