「アル、口が過ぎるぞ」

 ジークはアルをたしなめた後で、エイミに視線を向けた。

「この食事は、エイミの労働に対する正当な報酬だ。誰に遠慮する必要もない。堂々と食べろ。三つ子はゾフィーにしか懐かなくてな、俺はたいそう困り果てていた。お前が来てくれて、本当に助かったと思ってる」
「……はい」

 ジークがエイミを励まそうと一生懸命に話をしてくれる。エイミにはそれが本当に嬉しかった。

 誰かに大切に思ってもらえることが、こんなに幸せなことだとは知らなかった。

「それから、お前の村が貧しく肉を食べられなかったというのなら……それは領主である俺の責任だ。税が重すぎるのか、土地が悪いのか、すぐに管轄の役人に確認してみる」
「いえいえ! そんな必要は……えっと、村はたしかに裕福ではなかったですけど、貧しいってほどでも……」

 領主であるジークを批判するつもりではなかったのだ。エイミはあわてて首を横に振った。だが、村が貧しくないと言い切るのは嘘になる。

「いい子ぶりっこというのが、本心を隠すことと同義なら、アルの言うことも一理ある。俺はお前の本心が知りたい」

 ジークは誠実に、エイミに語りかける。
 
 いい子でなくても、きっと彼ならば受けと止めてくれる。そんな気がした。