ありのまま気持ちをさらけ出せるのは、きっと今しかなかった。

「山脇さんに深入りするなって言われました・・・。そういう世界も、幹さんの生き方も、私は解ってあげられないんだと思います。何より両親を悲しませたくないんです。好きな人が極道で、結婚相手もいるなんて言えない。・・・嘘を突き通せるのか、どこまで自分を赦せるのか分からないんです・・・・・・」

幹さんは黙ったままだった。黙って、一瞬きつさを増した束縛を(ほど)いた。

ぎこちなく振り返り真っ直ぐ上を向く。目を見れば分かる。言葉は殺していても私に隠さない、・・・傷付いた哀しい色の眸。

「・・・幹さん」

切れ長の眼差しがありありと揺れた。

「幹さんのものになりたいって・・・言い切れる自信が今はないんです。でも離れるのは嫌です、だから少しだけ待ってください。・・・私ちゃんと」

「待っててやるから俺のものになれ」

途中であっという間に胸元に抱き込まれ、安堵にも似た吐息が頭上にくぐもる。

「同じ水に棲めねぇのは承知のうえだ・・・、イトコはイトコのままでいい。どうしようもねぇことは俺が全部引き受ける」

霧雨のように染みてくる声。

「このさき子供ができても、治らねぇ病気になったとしても墓の下までお前のことは俺が責任を持つ。・・・なにも心配するな、信じてただ寄っかかってろ」