彼女の仕草に見惚れ、俺が何も言わないので言葉を補足される。

「美術展」

 ああ。

 なおも笑顔で可愛らしい存在のまま、白ゆりはぱちぱちと目を瞬き、俺を見ていた。

 うん。きみに決めた。

 調子付いて俺は彼女に右手で指し示した。

 *

 夕方、自宅のアパートへと帰り着き、一人きりの部屋で風呂を済ませた。

 高二にあがるちょっと前に、俺は家を飛び出し、一人暮らしを始めていた。

 高校生が一人暮らしだなんて、とても現実的では無いが。家庭の事情というやつだ。

 首にタオルを掛けたまま居間に戻り、スマホを手にする。

 電話のアイコンに不在着信を示すバッジが張り付いていて、確認すると母さんからだった。

 不意に心苦しくなる。

 メッセージアプリにも同様の①のバッジが付いていて、中を開くと、案の定母さんからだった。

【和奏、ちゃんと食べてる?】

【たまには実家にも帰って来なさいよ、近いんだから。お父さんも大学の事心配してるんだからね?】

 母さんからのメッセージを読み取り、返事も返さずに、スマホを机上に置いた。