きみに想いを、右手に絵筆を


 【太陽の庭:一年三組 高平(たかひら) 和奏(わかな)

 油絵具で完成されたそれは、タイトルに相応しく眩しかった。

 太陽の日差しを受けて立つ三本の向日葵の花がキラキラと輝いている。

 丁度高一の夏だ。あの頃はまだ、俺が親父の血を継いで画家になろうと一心不乱に絵筆を握っていた。

 自然と眉間にシワが寄る。

 二年前の美術展。過去の栄光。敗れた夢。

 陰鬱な気持ちでグッと右手を握りしめ、そこに視線を落とした。

 *

 教室でタツと昼飯を食べてから、屋上で一人ゴロ寝をしていた。

 数名の女子やカップルがお弁当を広げているのが遠目に見える。

 青春だよねー、と揶揄して、また溜め息を吐く。幸せそうな彼らを尻目に、さっきのプリントをポケットから出して、目の前に掲げる。

 美術展。最後だと思って……、か。

 タデやんの台詞に続き、『噂の美少女描いて?』というタツの申し出をも思い出す。

 白ゆり。

 まさに高嶺の花だった。

 男が苦手で内気で奥ゆかしさいっぱいのあの子に、絵のモデルなんか頼めるはずがない。

 そうは思うものの、ロビーで見た美少女を頭の中で思い描き、胸が熱くなった。