きみに想いを、右手に絵筆を

 九月の半ば。まだまだ残暑は厳しく、ジリジリと強い西陽が肌へ照り付ける。

 そばに置いた蚊取り線香の匂いが、どことなく懐かしさを呼び起こした。

 美術展の絵を描いてからというもの、俺は真面目に部活を楽しむようになり、毎日のように絵筆で何かしらを描いている。

 この先の進路としては、タデやんに勧められた美大を目指そうと決め、今はただひたすらに努力中だ。

 そうそう。白河……いや、彼女の百合菜を美術室に呼んで絵のモデルになって貰う事もあった。

 彼女は被写体として人気らしく、部活仲間からも描かせて欲しいと依頼を受けていた。

 そして、今では百合菜を連れて、時々実家にも顔を出すようになった。

 俺は親父のアトリエを借りて絵を描き、親父に指南されながら描く時間も増えていた。

 親父との仲が好転した事に、母さんが一番喜んでいた。

 そういう今日も実家に泊まるつもりなので、時間が許す限り、百合菜とまったり過ごそうと決めている。

 隣りに座った俺の右手に触れて、百合菜が笑みを浮かべた。