きみに想いを、右手に絵筆を

「も、もう! ママったら。和奏先輩は」

「ハイハイ。百合菜の彼氏よね? 分かってるわよー」

 頬を膨らませてむくれる彼女に、お母さんは茶目っ気たっぷりに笑った。

 居間に通され、出してくれたお菓子とジュースを口にする。

「あと、それからコレね」

 今日の新聞をテーブルに置いて、お母さんはキッチンへと戻った。

 丁度夕飯の準備をしているようで、カレーのいい匂いがした。

 俺は早速新聞を開いて、美術展の結果を載せた記事を探した。

「あった!」

 先に彼女が見付けて指を差す。美術展の入選結果と書かれたコーナーを見て、眉を寄せた。

【審査員特別賞、高平 和奏(18)『きみの手』

高平画伯の息子、惜しくも入選ならず!】

 俺が描いた絵の横にそんなタイトルが並べられ、それに続き、つらつらと選評が書かれてあった。

「ははっ、言ってろ」

 "高平画伯の息子"、この言葉はまだまだこの先も俺に付いて回る事だろう。

 だけど、それでも良いんだ。

 描きたい意欲を無くさない限り、俺は今後も絵筆を握り続ける。

 新聞を置いて、彼女と二人、縁側に移動して座った。