色白の小顔に大きくつぶらな瞳、紅く潤う果実のような唇。

 綿菓子みたいに軽そうなふわふわの髪が風でなびき、華奢な肩幅をさらりと撫でる。

 噂で聞いたまんまの姿で、すぐそこに美少女が立っていた。

 今年、四月に入学してきた一年生、白河 百合菜だ。みんな彼女に愛着を込めて"白ゆり"と呼ぶ。

 正直、噂を聞いた時は何が美少女だと鼻で笑ったけれど、初めて目にして納得した。

 うん、美少女だ。

「ね、きみきみ〜! 絵のモデルとか興味ない?」

 突然走り寄るタツにギョッとし、チャレンジャーか! と心の中で突っ込みを入れる。

 白ゆりは両手に抱えた教科書で顔を隠し、逃げるように走り去った。

 そうだ。噂によると白ゆりは男が苦手だった。

「や、引くって。普通」

 美少女に届かぬ手を伸ばしたまま、タツが本気で落ち込んだ。

「一年よね、確か」

 杏奈が腕を組みながら、ふぅんと呟いた。

 描いて欲しかったとやさぐれるタツを、とりあえず「スマン」と言って宥める。

「あの子、和奏の絵見てたねーっ?」

 そこに飾られた額縁を見上げ、杏奈に腕を引かれた。必然的に"それ"を見る事になる。