月曜日。完成した絵をタデやんに提出すると、奴は言葉をなくし、食い入るようにキャンバスを見ていた。

「高平……。お前、ようやく抜け出したな?」

 スランプから、そういう意味だと解釈して、俺は「はい」と返事をした。

 作品から全力を出し切ったのだと伝わったらしく、ダメ出しは一切無かった。

 その日。教室で顔を合わせた杏奈が、泣きそうな顔で「ごめん」と謝ってきた。

 そのまま特別棟へ呼び出されるので、杏奈と二人で話す事にした。

 彼女の話によると、一度目の失敗作は杏奈の仕業らしい。

 白河に嫉妬して、カッとなってやったと言っていた。

 俺は杏奈を見て、「もう良いよ」と声を掛けた。

「アレは渾身の一作にはなり得なかったし。駄目にしてくれて、却って良かったよ」

 そう言って、情け無く笑みを浮かべると、杏奈は涙を零した。

「あたし。ずっと和奏が好きだったの……でも、和奏は。あの子の事が好きなんだよね?」

 杏奈の言葉を聞き、彼女には申し訳ないと思いつつも、俺は眉を下げて首肯した。

「白河は。ただ可愛いだけの子じゃないから……。俺にはあいつが必要なんだ」

そっか、と呟き、杏奈が力なく笑う。

「あんなに可愛いのに中身も魅力的だなんて、最強だね。かないっこない……」