きみに想いを、右手に絵筆を

 ハイ、と言って母さんから一度目の失敗作を返される。

「和奏が家を出て行ったあと、何度かうちに来てたわよ?」

 白河が……?

 母さんが立ち去った後、画布をまた鞄に仕舞い、俺は無意識に右手を見つめた。

 ーー「この手は凄いんだって、私は尊敬してる!」

 いつだったか、中庭のベンチで話をした時。彼女は俺の手を握り、真剣な瞳でそう言った。

 あの時に触れた白河の両手は、やけにあったかかった。

 何なんだよ、あいつ。

 胸の奥がギュウッと締め付けられる。ただただ愛おしかった。

 ファン、とか。他人行儀な事言いやがって。俺の事、元から知ってんじゃねーか。

 ーー「和奏先輩は優しいし、特別なので」

 今までの白河を思い出し、俺は左胸をグッと手で押さえた。

 心臓が痛い。

 白河がこれまでに掛けてくれた言葉は、何て重いんだろう。

 彼女の上っ面しか見えていなかった俺は、何て浅はかで滑稽なんだ。

 ハァ、と物憂い溜め息が浮かんだ。

 ーー「自分だけそうやって逃げるのは……っ、卑怯だよっ!」

 最後に聞いた白河の言葉を思い出し、確かにその通りだと思った。

 彼女の言う通り。