きみに想いを、右手に絵筆を

 俺は右手で顔を覆い、彼女から顔を背けた。

 こう言ってしまえば白河がもう何も言えなくなるのを分かっていた。

 "才能"なんて、不確実な物は誰にも測れない。ただその自信がない、と。本人が意欲をなくせば、第三者は大体口を噤むしかないんだ。

「才能ないって……」

 白河の口調がいつもと違って厳しくなった。

「先輩はお父さんに対抗するの、逃げてるだけじゃないッ!?」

 は……?

 きっと自分の一番痛い所を突かれたせいだろう。瞬時に苛立った。

「あんたに何が分かる!?」
 
 白河はビクッと肩を震わせ、大きな瞳に涙を滲ませた。その表情を見て、あ、と罪悪感が顔を出す。

「ごめ、俺、」

「私に"諦めるな"って言ったの、和奏先輩だよ?」

「……え?」

 白河はスカートのポケットから何重かに折り畳んだ紙きれを取り出し、俺に押し付けてきた。

「自分だけそうやって逃げるのは……っ、卑怯だよっ!」

 俺は言葉をなくし、ただただ彼女を見ている事しかできなかった。

「もういい……っ、」

「し、白河っ!」

 白河はポロポロと涙を零し、美術室を走り去った。

 すぐに追いかけるべきだったのかもしれない。